邑南町

香木の森公園
ハーブ縁に地域と人結ぶ

3.香木の森公園

春から初夏に近づくと、香木の森公園(島根県邑南町矢上)に色とりどりのハーブが咲き始める。甘い香りのカモミール。ミントは葉っぱを触って匂うと爽やかな香りが広がる。

香木の森は、旧石見町が過疎化に悩む地域に新たな魅力をつくろうと整備した公園。約4・5ヘクタールにキンモクセイなど香る木を植えたことから名付けられた。開園後、町民有志がハーブ栽培に取り組み、次第に公園の「主役」になった。

一躍有名になったのは1993年から始まった研修制度。都市部の若い女性にハーブ栽培を1年間体験してもらう取り組みで、初年度は6人の定員に70人の応募があった。定住促進を狙った制度は2013年まで続き、農業体験も含めて132人が参加し、うち30人が邑南町に定住した。後に国が始めた「地域おこし協力隊」の先駆けとなった。

園内には約240種のハーブが植えられ、ハウスでは苗を販売。コリアンダー、レモングラスなど食べられるハーブも人気だ。園内で育て、乾燥、ブレンドした「ハーブティー」は、全国の高級旅館に採用される。近年開発されたハーブソーダは今年、大田市で羽生善治九段と藤井聡太王将が対戦した将棋の王将戦で飲み物として提供され、「羽生聡太(ハーブソーダ)」と交流サイト(SNS)で話題になり、一気に販売量が増えた。

園内の「クラフト館」ではハーブの商品など地域のお土産がそろい、週末には産直市も開かれる。公園に隣接する、里山イタリアンAJIKURA、レストラン香夢里、ソフトクリームなどを扱うMui(ミューイ)では、ハーブが料理に取り入れられている。

ことし開園から32年目を迎える香木の森公園は、ハーブを起点に地域と人と香りをつなげながら、見て、匂って、食べて、育てる、と多彩な楽しみを提供している。

写真1:約240種のハーブが植えられた香木の森公園
写真2:香木の森のハーブを使ったハーブティーやハーブソーダが人気
≪メモ≫香木の森公園では子どもが遊べる遊具も備え、6月中旬からラベンダー摘み取り体験、7月中旬からブルーベリー狩りなどのイベントも。クラフト館は火曜日定休。問い合わせは邑南町観光協会☎0855(95)2369。
もりた・いっぺい
1968年、島根県邑南町生まれ。地方紙記者を経て、JR三江線の廃止を機に帰郷。町役場で働きながら、NPO法人江の川鉄道の設立に加わり、廃線跡にトロッコを走らせる。年間誌を発行する「みんなでつくる中国山地百年会議」事務局長。江の川流域広域観光連携推進協議会のメンバーとして広報を担当する。邑南町在住。

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